2000-04-04 Tue 00:00
[続編、特別編]
俺はこの日知らなかった。
何事も前触れもなく、予想もつかない事態はある。
例えばその日は予定外の休日に羽を伸ばしながらダラけるプランを立てていた。しかし甘かった。予想外の出来事と言うモノはいくらでもある、が。
俺の苦労を増長させるものは・・・喜ばしくない。
それが最初の印象だ。
「・・・今日から・・・」
そこは異質な空間。赤青黄に紫色の線が湾曲している。そのぐねぐねした空間に射す光は、上からではなく下から光が漏れ、空間が捻じ曲がっている。その場に一人浮いていた少女は、一言呟くと下の光へと静かに入っていった。
あー今日の不幸。
財布忘れた。
坂で怖いおっさんに睨まれた。
廊下の曲がり角にバケツがあって、コケて気絶したりした。
教室で遊んでた男子陣のバスケットボールが顔面ヒット。眼鏡のフレームが曲がる。
そして、今現在。
「あー、めんどっ、くさいな・・・」
「ピぃー。仕事怠慢の罪で不幸100年の刑っす」
「口笛できてねぇよ。悪魔界はっ、ダラける人に容赦ない法律あんだな。NEETとかいなさそうだ」
「いや、タカシ専用っすけど?」
「・・・アホ」
見渡せば色黒の男達が各々作業をしている。
俺もただいま運動場でのお仕事。スコップで俺の身長を超える巨大な砂山を掘り返している。ある程度砂が蓄積したら一輪に乗せる。
本来は部活ある者達の仕事だが、不幸のせいで窓を割ったりしている俺は特別扱い。こういう作業には絶対に呼び出しを食らう。
クソッあの角刈りで体格いい教師陣め・・・!
「おーい。そこはもういいからコッチ運んでくれー」
「うぃ〜・・・」
噂を考えれば角刈りで(略)登場か。また仕事が増えたよ・・・。もう2時間くらい作業してんぜ・・・。荷物運びだるいな・・・。
ゾンビの如く歩く俺。横でクマの顔が貼りついている手帳を見ている悪魔は疫病神のような友達のような奇妙な存在。コイツを一言で言うなら、常識知らず。
「んっと、不幸手帳に書いてるくらいの不幸は味わったっすね♪ 後は楽させてあげるっすよ!」
「何を言っている・・・」
あーもう着いちまった。グラウンドの端にはバットやらグローブやらたくさんある・・・。すぐ近くの野球部部室から出すだけ出しやがったか。
「んじゃサクっと」
「できたらなぁ・・・」
「ちょっと待っててくださいねぇ」
「何企んでんだか・・・」
俺と同じ体操服の悪魔。思えばコイツは尻尾とかないのな。悪魔には尻尾が常識ってイメージがある。他の印象が強すぎて忘れていた。服の中に隠しているのだろうか?
「何やってんだか・・・」
先ほどから中腰で鉄と鉄がぶつかり合う音を出しながら何かしだすルキィ。太陽に照らされる紫の髪はいつ見ても違和感がある。今でこそ俺ら一般人と同じ衣装だが、普段はTHEエージェント黒服なのだ。
不幸を軽減してくれると俺に取り憑いたこの悪魔。俺の想像していた悪魔とは似ても似つかない、人間らしく、アホっぽい天然。
ついでに
「んじゃ行きましょっか♪」
「・・・あぁ」
ほら、常識がない。一般人を遥かに超える身体能力の持ち主。山程あった荷物達は、二つの腕で全て持たれていた。バランスとるのが難しそうだ。
「オイっ・・・見ろよアレ」
「す、すごいわ・・・」
「なんだと・・・!?」
グラウンドの真ん中らへんまで来ると、一様に周囲の人々は驚きをしめす。うんうん。そうだよな。光景オカシイよな。180キロくらいありそうな荷物持ってりゃ普通―――
「すげーぞあの転校生!!」
「そうね!! がんばってー!!」
「認めるしかないか・・・!」
え?
「いやー照れちゃいますねぇ〜」
それぞれ仕事をしていた者たちは歓声を飛ばす。仕事のないNEET・・・じゃなくて帰宅部連中まで窓から顔を出して騒ぐ始末。一気にグラウンドは騒がしくなる。いや、なんでそっちの方向へいくんだよ。常識的に考えたらおかしいだろ?
「ヒュゥゥーー!!」
ルキィと違った上手い口笛を鳴らせる男子生徒。いや、なんでそういうテンションに走るんだ。絶対反応おかしいだろ。脳内操作でも影でされてるのか? 正気に戻るんだ。
♪
「自重しろよ」
「えー。大人気だったじゃないっすか♪」
「そういう問題ではなぁいっ」
仕事が終わり、制服に着替えてHR。俺は一般教養と一般常識を蓄えているのでこの常識ブレイカーに注意をする。
しかし、俺の席の隣は中性っぽい女子だったと思うんだが・・・いつの間にルキィになったんだ。
「あー、明日のは球技大会は皆で力を合わせ、優勝を狙って欲しい」
「まぁまぁ。大抵のコトはココじゃなんとかなるっすから♪」
「その根拠は・・・?」
「えへー」
「・・・全く」
量産型疑惑のある先生の話を無視する。悪魔委員会とかいうのが全員の認識能力等を落としているのだろうか。まぁTV沙汰にならん程度には大丈夫なのか・・・。
「それでも抑えろ」
「えー」
俺の不屈の常識が緩んできそうだ・・・。
「以上」
「あ、連絡事項終わったみたいっすよ」
「ふぅ・・・。帰るか」
「あい♪」
全員が起立。しかしまぁ頭痛の種が消えんな・・・。
♪
「お、クラスメイト」
「高士・・・?」
夕焼けの校門でバッタリ。そんな虚ろな眼差しを向けないでくれ。
「クラスメイト君ちぁーっす」
「ルキィちゃん・・・?」
「じ、冗談だ。今日はなんだか地・・・静かだったから、つい」
「今日会うの初めてでしたっけ?」
「いつも通りだよ! 昼休み会ったじゃないかルキィちゃん!」
うーん。コイツには呪いがかかってるとしか思えん。名前を・・ってか存在をつい忘れてしまう。
「あーうっかりしてたっす。田中スペ―――」
「言ったらダメだってーー!?」
「あ♪」
なにやってんだか・・・。
「んじゃ行くぞ〜」
今日は疲れたので早く帰りたい。明日は球技大会だし。
「んじゃばいば〜〜〜いっす〜」
「あばよー」
「またね〜」
ルキィにだけ手を振り、俺には「さらばっ」ふざけよってからに。
まぁ悪いヤツではないから、いいか。
♪
「ふぅ〜」
拍子抜けとはこの事だろうな。まぁ嬉しいんだが。
「タカシ〜」
「ん〜どうした〜?」
今日は球技大会、の予定だったが、突然の雨天により中止になった。田中がメールで凄い欝な文を送ってきたが、落ち着いて無視した。
猫パジャマを脱いで下に行こうと思ったが、このパジャマ保温性が無駄に高すぎて脱ぐ気になれないのだ。
仕方ないのでベッドに転がって南新聞を読んでいた。この記事はなんかおもしろいな。
「今日から妹が来るっす♪」
「・・・」
「・・・たはぁ〜」
イマナンテイッタ?
「だから、妹が来るんっすよ♪ い・も・う・と♪」
「・・・」
「・・・たはぁ〜」
フザケンナヨ?
「そ、そんなハニワみたいな顔で喋らなくてもいいじゃないっすか〜
それに何か不都合があるんっすか!? がぁるふれんどと無縁の生活をしているタカシに! 女友達が増えるチャァァンスじゃないっすか!」
大きなお世話だ。オマケに最近変な外来語を覚えてきやがったなコイツ。俺は眼鏡を外し、ベッドに座る。見据えるは馬鹿(ルキィ)。
「たしかに従兄弟とか親の友達の紹介で女友達増やしてる奴もいる。俺は女好きじゃないが嫌いでもない」
「じゃ、じゃあ―――」
「た・だ・し! 普通の人間ならだ!」
指を指す。ビシッ。
「っウ」
「お前の妹なら絶っ対に不幸絡みの関係者だろうが! 悪魔なんだから当然だよなぁ!?」
「そ、そうっすが―――」
「やっぱりか!? 俺の赤点をこれ以上増やしてどうなる!?
俺を留年させる気か!? そうは行くかぁ! 玄関に砂糖とニンニクをばら撒いてやるわァ!!」
「た、タカシ落ち着いて! 言ってることがハチャメチャっすよ!?」
「ぅっせー!」
「家に侵入できないようにしてやる!」
不幸絡みのことになると熱くなる俺。今まで大変だったんだからな・・・!
雨だが一応換気のタメ開けていた窓に、勉強机越しに近寄り、鍵をしっかりと閉める。次は玄関と一階の窓も閉めなけれ―――
「あ、到着したみたいっすよ〜」
「なに!? どこからだ!!」
そうか! 進入口を塞いでも悪魔はすり抜けられたか! まずい。どこからだ・・・。
「ほら♪」
「ん?」
俺の後ろを指差すルキィ。
「・・・・・・・・・・・・へ」
雨をものともせず、何か黒い物体が高速接近。窓越しに。
「まてまてまてまててままてまててま」
黒い点はまばたきを一度する頃にはデカいタイヤ並の大きさになって近づいてくる。
あのスピードじゃ止まらねぇんじゃ―――
バゥワヮヮヮァァァアアアアリィィィィンンンっっ!!!
窓ガラス2枚を壮絶な音でカチ割り、黒い影は俺の部屋の中に到着してしまった。いや音でかい。近所迷惑。家中はおろか、お隣りさんにまで聞こえたんだろうな。破片の直撃コースに居た俺はいつの間にかドアのすぐ前に立たされていた。横にルキィがいる。
「・・・到着」
何を低音ボイスで仰るのだこの悪魔2号は。ぜんぜん悪魔っぽい侵入方法じゃねーよ。すり抜けでも玄関からでもなくて窓から豪快な入場を果たす悪魔がどこにいる。
「お、おまえは何やってんだ!?」
あまりの衝撃的出会いに戸惑う俺。出会いってなんか良い響きだな。一瞬このガラス片散らばる部屋の惨状を忘れられそうだ。
「やっほー! ひっさしぶりぃ〜!」
「・・・3ヶ月ぶり、お姉ちゃん」
やっぱコイツが妹かい・・・。って妹悪魔の服やばいだろ。それって―――
「学生服!?」
「あ、そういえばタカシの学校のと同じっすねぇ〜!」
「・・・みたいです」
俺の学校の制服と同じ、黒を基調とした・・・っつうか真っ黒男子生徒用制服。ボタンは悪魔印。しかし俺の頭1,5個下程の小柄な妹君には大きすぎるサイズだ。袖で隠れて手が見えんし。
「エージェント服の次は学生服・・・黒けりゃ何でもいいのか・・・」
「えへへ〜! よく似てるっしょー!」
「お姉ちゃんやめ―――」
抱きつくボケ悪魔。たしかに似ているな。
髪はルキィと同じ肩付近のショート、そして色は相変わらず非常識な紫。・・・いや、ルキィと少し違うな、薄紫か? 眼も薄紫色。瞼が眠いんじゃないかって位ボーっとしているが、振りほどこうと暴れながらも変わってないから、あの開き具合が普通なんだろな。
あ、ルキィが笑顔で釈放した。
「・・・ふぅ。高士さん・・・」
「あ、はい」
「今日から卒業実習と姉のサポートを兼ねてアナタに憑かせていただきます」
棒読みの台詞。何度も練習したみたいな機械的リズムを感じる。
「いや、拒否権は」
「ないっすねぇ〜。悪魔委員会乱暴っすから♪」
「・・・よろしくお願いします」
「お断りしま―――う」
背筋に悪寒。
「それはいかんなぁ高士♪」
「そうよ♪ こ〜んな可愛い子が守護霊になってくれるなんて、幸せ者ね♪ 高士♪」
「ぬわっ! だから気配消してこないでくれ!」
入場音楽はやはり聞こえていたようだ。俺の父母はノリノリの勢いでルキィ妹に近寄る。
「部屋はまだ空いてるから好きに使ってくれ♪ それとも」
「ルキィちゃんと同じ部屋がいいかしら♪」
「あ! おんなじがいいっすー!」
「・・・・お願いします」
「あ、あのぉー」
「さ♪ お昼ご飯でも食べようか♪」
「今日はハヤシライスよ♪」
「わーい♪」
「行きましょう・・・」
一同が部屋を出て行く。
アレ? 決定?
一同は部屋を出て行く。
先頭に押されていた悪魔妹がわざわざ戻り、俺に言う。
「お世話に・・・なります。それと・・・ゴメンなさい・・・っ」
「へ?」
何か手を一瞬動かし、そのまま走ってルキィ達に追いつく妹くん。
「あ・・・!」
右頬に軽い出血。小さなガラス片が1,2箇所俺の顔面を刻んだらしい。さっきまでなかった。
「・・・不幸決定事項ね」
丁寧に戻ってきて仕事を果たしたらしい。優秀なことだ。
そう。俺の不幸はより確実、確定的なモノになったのかもしれない。
何事も前触れもなく、予想もつかない事態はある。
例えばその日は予定外の休日に羽を伸ばしながらダラけるプランを立てていた。しかし甘かった。予想外の出来事と言うモノはいくらでもある、が。
俺の苦労を増長させるものは・・・喜ばしくない。
それが最初の印象だ。
「・・・今日から・・・」
そこは異質な空間。赤青黄に紫色の線が湾曲している。そのぐねぐねした空間に射す光は、上からではなく下から光が漏れ、空間が捻じ曲がっている。その場に一人浮いていた少女は、一言呟くと下の光へと静かに入っていった。
あー今日の不幸。
財布忘れた。
坂で怖いおっさんに睨まれた。
廊下の曲がり角にバケツがあって、コケて気絶したりした。
教室で遊んでた男子陣のバスケットボールが顔面ヒット。眼鏡のフレームが曲がる。
そして、今現在。
「あー、めんどっ、くさいな・・・」
「ピぃー。仕事怠慢の罪で不幸100年の刑っす」
「口笛できてねぇよ。悪魔界はっ、ダラける人に容赦ない法律あんだな。NEETとかいなさそうだ」
「いや、タカシ専用っすけど?」
「・・・アホ」
見渡せば色黒の男達が各々作業をしている。
俺もただいま運動場でのお仕事。スコップで俺の身長を超える巨大な砂山を掘り返している。ある程度砂が蓄積したら一輪に乗せる。
本来は部活ある者達の仕事だが、不幸のせいで窓を割ったりしている俺は特別扱い。こういう作業には絶対に呼び出しを食らう。
クソッあの角刈りで体格いい教師陣め・・・!
「おーい。そこはもういいからコッチ運んでくれー」
「うぃ〜・・・」
噂を考えれば角刈りで(略)登場か。また仕事が増えたよ・・・。もう2時間くらい作業してんぜ・・・。荷物運びだるいな・・・。
ゾンビの如く歩く俺。横でクマの顔が貼りついている手帳を見ている悪魔は疫病神のような友達のような奇妙な存在。コイツを一言で言うなら、常識知らず。
「んっと、不幸手帳に書いてるくらいの不幸は味わったっすね♪ 後は楽させてあげるっすよ!」
「何を言っている・・・」
あーもう着いちまった。グラウンドの端にはバットやらグローブやらたくさんある・・・。すぐ近くの野球部部室から出すだけ出しやがったか。
「んじゃサクっと」
「できたらなぁ・・・」
「ちょっと待っててくださいねぇ」
「何企んでんだか・・・」
俺と同じ体操服の悪魔。思えばコイツは尻尾とかないのな。悪魔には尻尾が常識ってイメージがある。他の印象が強すぎて忘れていた。服の中に隠しているのだろうか?
「何やってんだか・・・」
先ほどから中腰で鉄と鉄がぶつかり合う音を出しながら何かしだすルキィ。太陽に照らされる紫の髪はいつ見ても違和感がある。今でこそ俺ら一般人と同じ衣装だが、普段はTHEエージェント黒服なのだ。
不幸を軽減してくれると俺に取り憑いたこの悪魔。俺の想像していた悪魔とは似ても似つかない、人間らしく、アホっぽい天然。
ついでに
「んじゃ行きましょっか♪」
「・・・あぁ」
ほら、常識がない。一般人を遥かに超える身体能力の持ち主。山程あった荷物達は、二つの腕で全て持たれていた。バランスとるのが難しそうだ。
「オイっ・・・見ろよアレ」
「す、すごいわ・・・」
「なんだと・・・!?」
グラウンドの真ん中らへんまで来ると、一様に周囲の人々は驚きをしめす。うんうん。そうだよな。光景オカシイよな。180キロくらいありそうな荷物持ってりゃ普通―――
「すげーぞあの転校生!!」
「そうね!! がんばってー!!」
「認めるしかないか・・・!」
え?
「いやー照れちゃいますねぇ〜」
それぞれ仕事をしていた者たちは歓声を飛ばす。仕事のないNEET・・・じゃなくて帰宅部連中まで窓から顔を出して騒ぐ始末。一気にグラウンドは騒がしくなる。いや、なんでそっちの方向へいくんだよ。常識的に考えたらおかしいだろ?
「ヒュゥゥーー!!」
ルキィと違った上手い口笛を鳴らせる男子生徒。いや、なんでそういうテンションに走るんだ。絶対反応おかしいだろ。脳内操作でも影でされてるのか? 正気に戻るんだ。
♪
「自重しろよ」
「えー。大人気だったじゃないっすか♪」
「そういう問題ではなぁいっ」
仕事が終わり、制服に着替えてHR。俺は一般教養と一般常識を蓄えているのでこの常識ブレイカーに注意をする。
しかし、俺の席の隣は中性っぽい女子だったと思うんだが・・・いつの間にルキィになったんだ。
「あー、明日のは球技大会は皆で力を合わせ、優勝を狙って欲しい」
「まぁまぁ。大抵のコトはココじゃなんとかなるっすから♪」
「その根拠は・・・?」
「えへー」
「・・・全く」
量産型疑惑のある先生の話を無視する。悪魔委員会とかいうのが全員の認識能力等を落としているのだろうか。まぁTV沙汰にならん程度には大丈夫なのか・・・。
「それでも抑えろ」
「えー」
俺の不屈の常識が緩んできそうだ・・・。
「以上」
「あ、連絡事項終わったみたいっすよ」
「ふぅ・・・。帰るか」
「あい♪」
全員が起立。しかしまぁ頭痛の種が消えんな・・・。
♪
「お、クラスメイト」
「高士・・・?」
夕焼けの校門でバッタリ。そんな虚ろな眼差しを向けないでくれ。
「クラスメイト君ちぁーっす」
「ルキィちゃん・・・?」
「じ、冗談だ。今日はなんだか地・・・静かだったから、つい」
「今日会うの初めてでしたっけ?」
「いつも通りだよ! 昼休み会ったじゃないかルキィちゃん!」
うーん。コイツには呪いがかかってるとしか思えん。名前を・・ってか存在をつい忘れてしまう。
「あーうっかりしてたっす。田中スペ―――」
「言ったらダメだってーー!?」
「あ♪」
なにやってんだか・・・。
「んじゃ行くぞ〜」
今日は疲れたので早く帰りたい。明日は球技大会だし。
「んじゃばいば〜〜〜いっす〜」
「あばよー」
「またね〜」
ルキィにだけ手を振り、俺には「さらばっ」ふざけよってからに。
まぁ悪いヤツではないから、いいか。
♪
「ふぅ〜」
拍子抜けとはこの事だろうな。まぁ嬉しいんだが。
「タカシ〜」
「ん〜どうした〜?」
今日は球技大会、の予定だったが、突然の雨天により中止になった。田中がメールで凄い欝な文を送ってきたが、落ち着いて無視した。
猫パジャマを脱いで下に行こうと思ったが、このパジャマ保温性が無駄に高すぎて脱ぐ気になれないのだ。
仕方ないのでベッドに転がって南新聞を読んでいた。この記事はなんかおもしろいな。
「今日から妹が来るっす♪」
「・・・」
「・・・たはぁ〜」
イマナンテイッタ?
「だから、妹が来るんっすよ♪ い・も・う・と♪」
「・・・」
「・・・たはぁ〜」
フザケンナヨ?
「そ、そんなハニワみたいな顔で喋らなくてもいいじゃないっすか〜
それに何か不都合があるんっすか!? がぁるふれんどと無縁の生活をしているタカシに! 女友達が増えるチャァァンスじゃないっすか!」
大きなお世話だ。オマケに最近変な外来語を覚えてきやがったなコイツ。俺は眼鏡を外し、ベッドに座る。見据えるは馬鹿(ルキィ)。
「たしかに従兄弟とか親の友達の紹介で女友達増やしてる奴もいる。俺は女好きじゃないが嫌いでもない」
「じゃ、じゃあ―――」
「た・だ・し! 普通の人間ならだ!」
指を指す。ビシッ。
「っウ」
「お前の妹なら絶っ対に不幸絡みの関係者だろうが! 悪魔なんだから当然だよなぁ!?」
「そ、そうっすが―――」
「やっぱりか!? 俺の赤点をこれ以上増やしてどうなる!?
俺を留年させる気か!? そうは行くかぁ! 玄関に砂糖とニンニクをばら撒いてやるわァ!!」
「た、タカシ落ち着いて! 言ってることがハチャメチャっすよ!?」
「ぅっせー!」
「家に侵入できないようにしてやる!」
不幸絡みのことになると熱くなる俺。今まで大変だったんだからな・・・!
雨だが一応換気のタメ開けていた窓に、勉強机越しに近寄り、鍵をしっかりと閉める。次は玄関と一階の窓も閉めなけれ―――
「あ、到着したみたいっすよ〜」
「なに!? どこからだ!!」
そうか! 進入口を塞いでも悪魔はすり抜けられたか! まずい。どこからだ・・・。
「ほら♪」
「ん?」
俺の後ろを指差すルキィ。
「・・・・・・・・・・・・へ」
雨をものともせず、何か黒い物体が高速接近。窓越しに。
「まてまてまてまててままてまててま」
黒い点はまばたきを一度する頃にはデカいタイヤ並の大きさになって近づいてくる。
あのスピードじゃ止まらねぇんじゃ―――
バゥワヮヮヮァァァアアアアリィィィィンンンっっ!!!
窓ガラス2枚を壮絶な音でカチ割り、黒い影は俺の部屋の中に到着してしまった。いや音でかい。近所迷惑。家中はおろか、お隣りさんにまで聞こえたんだろうな。破片の直撃コースに居た俺はいつの間にかドアのすぐ前に立たされていた。横にルキィがいる。
「・・・到着」
何を低音ボイスで仰るのだこの悪魔2号は。ぜんぜん悪魔っぽい侵入方法じゃねーよ。すり抜けでも玄関からでもなくて窓から豪快な入場を果たす悪魔がどこにいる。
「お、おまえは何やってんだ!?」
あまりの衝撃的出会いに戸惑う俺。出会いってなんか良い響きだな。一瞬このガラス片散らばる部屋の惨状を忘れられそうだ。
「やっほー! ひっさしぶりぃ〜!」
「・・・3ヶ月ぶり、お姉ちゃん」
やっぱコイツが妹かい・・・。って妹悪魔の服やばいだろ。それって―――
「学生服!?」
「あ、そういえばタカシの学校のと同じっすねぇ〜!」
「・・・みたいです」
俺の学校の制服と同じ、黒を基調とした・・・っつうか真っ黒男子生徒用制服。ボタンは悪魔印。しかし俺の頭1,5個下程の小柄な妹君には大きすぎるサイズだ。袖で隠れて手が見えんし。
「エージェント服の次は学生服・・・黒けりゃ何でもいいのか・・・」
「えへへ〜! よく似てるっしょー!」
「お姉ちゃんやめ―――」
抱きつくボケ悪魔。たしかに似ているな。
髪はルキィと同じ肩付近のショート、そして色は相変わらず非常識な紫。・・・いや、ルキィと少し違うな、薄紫か? 眼も薄紫色。瞼が眠いんじゃないかって位ボーっとしているが、振りほどこうと暴れながらも変わってないから、あの開き具合が普通なんだろな。
あ、ルキィが笑顔で釈放した。
「・・・ふぅ。高士さん・・・」
「あ、はい」
「今日から卒業実習と姉のサポートを兼ねてアナタに憑かせていただきます」
棒読みの台詞。何度も練習したみたいな機械的リズムを感じる。
「いや、拒否権は」
「ないっすねぇ〜。悪魔委員会乱暴っすから♪」
「・・・よろしくお願いします」
「お断りしま―――う」
背筋に悪寒。
「それはいかんなぁ高士♪」
「そうよ♪ こ〜んな可愛い子が守護霊になってくれるなんて、幸せ者ね♪ 高士♪」
「ぬわっ! だから気配消してこないでくれ!」
入場音楽はやはり聞こえていたようだ。俺の父母はノリノリの勢いでルキィ妹に近寄る。
「部屋はまだ空いてるから好きに使ってくれ♪ それとも」
「ルキィちゃんと同じ部屋がいいかしら♪」
「あ! おんなじがいいっすー!」
「・・・・お願いします」
「あ、あのぉー」
「さ♪ お昼ご飯でも食べようか♪」
「今日はハヤシライスよ♪」
「わーい♪」
「行きましょう・・・」
一同が部屋を出て行く。
アレ? 決定?
一同は部屋を出て行く。
先頭に押されていた悪魔妹がわざわざ戻り、俺に言う。
「お世話に・・・なります。それと・・・ゴメンなさい・・・っ」
「へ?」
何か手を一瞬動かし、そのまま走ってルキィ達に追いつく妹くん。
「あ・・・!」
右頬に軽い出血。小さなガラス片が1,2箇所俺の顔面を刻んだらしい。さっきまでなかった。
「・・・不幸決定事項ね」
丁寧に戻ってきて仕事を果たしたらしい。優秀なことだ。
そう。俺の不幸はより確実、確定的なモノになったのかもしれない。
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テスト勉強しろやっっっっwww
誰だ!4日間寝る間惜しんで勉強してた奴!!!www
Fくん&rykさん。
はて。なんのことでしょうか(笑)
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