2000-04-04 Tue 01:17
[続編、特別編]
・・・ついにやってきた・・・。
雪辱を晴らすこの日がな・・・。
長く、苦しい日々だったが! それもここまでだ!!
俺は・・・やってやる!!!
「ふぅ・・・」
薄暗い中、足元の球を掴み、コンクリート製の壁に書いた的に狙いをつける。脳内の集中力は俺の能力内で最大値だ。
「うぅぉおおりゃぁああぁあ!!!」
頭と腕に血液を多めに集め、全身のバネと筋力を使い、真っ直ぐ◎状の的に飛ばす。運動が足りない体は軽い悲鳴をあげるが、微細なものだ。
「・・・きまった」
あまりの衝撃に、橋の下であるここは衝撃が反響した音で包まれた。
「わぁ〜・・・ぷろ野球選手みたいな球っすね!!」
「だろぉ? これを完成させるのにどれだけ苦労したか・・・」
「名前はあるんっすか??」
「もちろんだ!」
腰に左手を当て、右手を太陽(橋に遮られて見えないが)の方角に指差す! 夜な夜な睡眠時間を減らしながら考えた決めポーズだ。これほどかっこよく、目立つ姿はそうは無いハズだ。
そして、この必殺魔球の名も既に決まっている。
「田中スペシャル4号だ!!!」
「・・・名前がダサいっす・・・」
「・・・」
衝撃音は消え、近くの川の流れる音しか聞こえなくなり、なんともいえない沈黙が一瞬場を満たす。
「・・・うるさいな! いずれ学校中に知れ渡る技名になるんだ!」
「んー。やっぱりクラスメイ―――じゃなくて田中君じゃ無理じゃないっすか?」
「今忘れなかったか!?」
「いやー♪ つい♪」
「う・・・クソぅ・・・」
草の地面に顔を向けて心の涙を垂れ流す。
「それより! 例の計画の準備は進んでいるか!?」
「あいあいもちろんっす! 球技大会の種目は野球、特に決勝戦は全校生徒が活目する大舞台っすよっ」
「ふふふ・・・ついに俺が皆に覚えられるのか・・・」
「なんだかおもしろそうでワクワクするっす〜」
説明が遅れた。俺の名は田中。通常の高校生と言えばその通りなのだが、強いて言えば目立たない。
一番の友達にだって名前を忘れられるのだ。つーか俺の一番友虚しいな・・・。
そして! このままでは卒業まで背景の一部になってしまう可能性が生まれてしまった俺は、OSM計画を発案した!
「田中君! OSN計画の全貌をもう一度教えてくださいっす!」
「ナイスタイミングでナイスな質問だルキィちゃん! それとOSMね」
「いやー内容が地味ですぐに忘れちゃって♪」
「・・・」
またしても嫌な沈黙。この子に・・・悪意はないんだ。そうなんだきっと。
「よろしい! 今一度この華麗な計画を反復させよう!」
「わーいっす〜」
ルキィちゃんは煎餅を取り出す。聞く気あんのかなぁ・・・。
「今年の球技大会で、俺が田中スペシャル4号を使い、敵を完封する。そして俺はクラスの英雄、高校のスターとして広く名前を覚えさせるための計画!
俺!(O) スゲー!(S) 目立つぜ!(M)
略してOSM計画!!」
もう一度決めポーズ。
「おー! 何度聞いても凄い計画っすね!!」
「・・・じゃあなんで忘れるのさ」
「うーん・・・語り手にいんぱくとがないからっすか?」
「・・・」
さっきから痛恨の一撃を連続で繰り返すこの子はルキィクルッストミンケルちゃん。本人の希望でルキィちゃんと短縮している。
長い名前だが、俺は人の名前を覚えるのは得意なので問題ない。
「うーん・・・。やっぱツッコミのれべるもタカシのが上っすね!
田中君だとしんくろ率が悪いっす!」
「・・・泣きたい・・・」
「まぁまぁ! ちゃんとアタシがさぽーとするっすから!」
エージェントを思わせる黒服に紫眼紫髪のルキィちゃんは、先日タカシが学校に連れて来た美人ちゃん。紫はとある王家の証らしく(高士談)、転校生として俺と高士のクラスにやってきたのだ。
俺が密かに田中スペシャル4号を練習している現場を目撃され、 [おもしろそうっすから手伝う〜〜♪] っと隊員になった。丁度一人で寂しかったので歓迎したのだが・・・。
「どうして田中君って地味なんっすかねぇ〜〜」
「ぐふっ!」
もっとも触れて欲しくないワード等で俺の胸を刺しまくる。さしずめ今のは妖刀ムラマサ級の大ダメージだ。
「アレっすよ。良い人だけど目だたない人ってよく聞くっすが、田中君のは究極レベルみたいっすねー」
「呪われてるんか・・・」
「不幸力場も人並みですし、目立った点はどこにないっすがねぇ」
知らない単語が聞こえたが、どこか悲しい。
「それより、そろそろ昼休み終わっちゃうっすよっ。
タカシもそろそろ打撲から眼を覚ます頃なのでアタシはそっちに向かうっす〜」
「もうそんな時間か、俺は教室行っとくよ」
「わっかりました〜〜」
ひらひらと飛び、保健室方面へと飛んで行くルキィちゃん。なんでも某国の王家に伝わる技らしい。世界にはエスパーとかよく聞くからその類なのだろう。
・・・な〜んかルキィちゃんのことになると現実思考が鈍くなってるような・・・。何かの陰謀なのだろうか・・・。
☆
「この陶芸の作品はー他の物よりも落ち着きという要素が―――」
美術の時間。角刈りで体格のよい先生の授業を真面目にうける。
「世界情勢も大事だがー身近な新聞を読むことで新たな発見―――」
世界史の時間。角刈りで体格のよい先生の授業をノートだけ写し、田中スペシャルの改良点を考える。
「国語は気合だ!気合さえあれば欠点はとらん!!」
そりゃねーよ・・・と考えながら堂々と惰眠。俺は昼寝がバレたことが一度もないので安心だ。
「ふぅ〜」
本来ならこれで授業は終わりなのだが、明日は球技大会なので準備を始める。 と言っても旗にペンキを塗るだけなので簡単だ。少し校庭らへんが騒がしいが、どっかの男子が何か楽しんでいるんだろうな。
「田島く〜ん。こっちもよろしくー」
「・・・田中ね?」
「あ、ごめんね」
可愛いなぁって思っていた女子に名前を間違えられる。とても虚しい。
☆
「んじゃばいば〜〜〜いっす〜」
「あばよー」
「またね〜」
校門で会ったルキィちゃんと高士に別れを済ませ、門をくぐる。
ふふふ・・・ついに明日か・・・。次にこの門を通るときは、生徒達の注目の的であろう。明日の球技大会が非常に楽しみだ。
「見てろよ・・・!」
野心と野望を持ち、俺は帰路についた・・・。
あ、自販機のつり銭めっけ。
☆
「おかえり〜」
「おかえりなさ〜い」
「ただいまー」
俺の家。ごく普通の一軒家で特筆すべき点はない。そして父は普通のTシャツを着、母は普通のエプロン姿だ。
俺はジャージに着替えたので一味違う。
「いただきまーす」
「風呂いってくるわ〜」
「んじゃ、おやすみー」
その後は普通に、晩飯を食べて風呂に入り、漫画を少し読んで寝た。
☆
「配役交代っす〜」
「へ?」
「いや、なんか悪魔委員会から伝言っすよ♪」
「何かの宗教?」
「あはは〜♪」
「?」
「あくま〜♪ あーくま〜♪ あーっくまーっす〜♪」
廊下で雑談しながら鼻歌を歌うアタシの名前はルキィ。容姿端麗(タカシの友達の、クラスメイトくんがそういってたっす)で超えりーと(悪魔要請学校首席で卒業!)さらには武術の達人(悪魔総合格闘技、学生の部、全悪魔国優勝)のスーパー悪魔っす!
「おいルキィ、次は明日の球技大会の練習だぞ」
「わっかりました〜!」
「・・・・フフフ」
クラスメイト君が笑っているっすが、まぁ置いておきましょう。アタシと一緒に歩いてるこの人はタカシ。既に体操服に着替えているっす。まぁ元々タカシを待っていて、廊下で待ってたワケなんっすが。
この人を不幸から守るためにアタシが派遣されたわけっすね! えっへん。
「そういえばタカシ、最近ゲッソリしてるけど大丈夫っすか?」
「・・・誰かさんの身元を必死で捏造してたんでね」
「あー! タカシ、それ人間界での犯罪じゃないっすか!?」
「・・・ウォイ」
こっちの世界での情報はバッチリ。しかしタカシが犯罪だなんて・・・。大丈夫っす。牢獄でも不幸から守ってあげるっすよ・・・。
「なんか偉い人のコネだけで転校って来た奴なんだが」
「わー。なんだか嫌そうな人っすね〜」
「そいつがハチャメチャな格好をしているから、一番親しそうな俺が周りから質問をされまくったわけだ」
「大変っしたねぇ・・・」
「・・・」
「どしたんっすか?」
「ッガーーーーー!!」
「!? タカシが暴走!?」
「いい加減気づけ! お前がなんの設定も決めずに着やがるから! 常識人達が反応すんだよ!」
「なんですと!?」
「お前のせいで! どれだけ労力を使ったことか!!」
「あ、あは〜〜♪ 眼鏡がズレてるっすよっ」
「知るか!」
「そんなことより急ぎましょ〜!」
「てめ! 飛ぶなー!」
背中から羽を出して滑空っす・・・。ばいく並のすぴーどが出るから追いつかれる心配はないっす。
いやータカシは人間的器が小さくていけませんっすね。うん。
☆
「はぁはぁ・・・」
「タカシが変態に・・・」
「誰かなるか!」
飛んでいるアタシに走って追いかけてきたタカシはへろへろりん。今は二人で座りながらやきゅーの打順を待っているっす。
あ、クラスメイトくんが打った。
あ、すごい高いな。
あ、ふぁーるだ。
あ、三振になってる。
「もう人の体乗っ取るなよルキィ・・・」
「あ、大丈夫っすよ」
「本当かねぇ・・・」
「うぃしょっと」
うっかり忘れてたっす。とりあえず立ち上がります。
「って何やってる!?」
「〜♪」
特殊不幸力場者用の黒制服のぼたんを外し、脱ぎ始めるっす。タカシが焦ってるっすがどうしてでしょう。
「お前! なにやってんだよ!?」
「へ〜?」
声を聴きながら、上の制服を完全に脱いだっす。
「・・・おい」
「なんっすか?」
「初めから言ええぇぇえ!!」
「だからなにがっすかぁぁぁああ!」
この学校の体操服を下に着込んでいたので、ずぼんを脱ぎ捨て、完全に1学生っす。悪魔委員会が [ルキィ] って縫ってあるのを届けてくれたんっす。いやー気前がいいなぁ〜。
「ルキィさーん。次だよー」
「あ、わっかりやしたーー!
んじゃ、お先にタカシ〜」
「あんま人間超えるなよ・・・?」
「悪魔っす♪」
女子クラスメイトさんからばっとをもらって、いざ出陣っす!
「・・・あなたは!?」
どこから吹いてるのか解らない砂塵を身に纏い、アタシの前に立つのは・・・。
「ルキィちゃんか・・・手加減はしねぇぜ!」
「誰でしたっけ!?」
「田中だよぉ!!」
涙でも流してしまいそうな田中くん。わ、わるいことしたっすかな?
「じょ、冗談っすよ〜」
「ウゥ・・・」
ピッチャーとしては優秀なんっすが、なぜ忘れてしまうのか・・・。まぁいいやー!
「とにかく! 勝負っす!」
「三日間俺の名でいっぱいにしてやるわぁあぁ!」
「なんの呪いっすかぁあぁ!?」
ツッコミをいれてる間に素早く構えて、一球目を投げました。
「すとらぁぁああぁっぁぁああいく!!」
人数不足のため参加している、角刈りで体格のよい体育の先生は気合が入ってるっす。
にしても田中くん・・・せこいっすよぅ・・・。
「ふっふっふ・・・田中スペシャル4号を使うまでもないかのぉ・・・」
「とにかく! 今のはマグレっす! 謀略っす!
次で終わりっすよ!」
「よかろう! 勝負だ!」
口調が変わってしまった田中くん。てんしょんが上がってるっすね・・・!
「食らえ! 田中スペシャル3号!!!」
「―――名前改名したほうがぁぁぁ―――」
すとらいくぞーん斜め左・・・。とらえたっす!
「いいっすよぉおおお!!」
「なにいいいいい!」
金属とぼーるは一瞬激しく交じり合い。すぐに空高くへと飛び立ちやしたっす・・・。まぁ難なくホームランっす。
「んなあっさり・・・」
「がんばって・・・クラスメイトくん・・・」
あ、名前なんだっけな。
「がくっ」
なんで忘れちゃうんだろうなぁ〜。
☆
「あくま〜♪ あーくま〜♪ あーっくまーっす〜♪」
「ルキィちゃ〜ん」
「ほぇー」
窓からの景色は緑色。人工的に植えられた大木が並んでいるのを見ていました。そんな風に廊下でぼーっとしてたら、今日で何度目だがわからないっすが、男子生徒話しかけられたっす。あ、この人タカシよりか〜っこいい〜。
「転校してきたんだっけ? 教室とか案内しようかな」
「大丈夫っす。転校初日に暗記したのでっ」
「あ、れ。じゃあ昼飯でも一緒にどう?」
「あータカシと一緒なんっすよ。いやーお父さんのおべんとーおいしくって♪」
「そ、そっか。それならまた誘うね」
「毎日こんな感じなのでたぶん無理っすけど」
「・・・ぐは」
肩を落として去っていく知らない人。アタシはもう働いてるので遊ぶことはできないんっす。こうやってアクビをしている間にもお給金が悪魔口座に振り込まれてるんっすよ・・・。ふわぁ・・・。
「悪い。待たせたか?」
「いえいえ〜。男子生徒くんと喋ってたので退屈じゃなかったっす」
「またか」
「不思議っすねぇ」
「こいつの性格を理解して来てないからな」
「そうそうアタシの本性を知ったら―――ってちゃうっす!!」
「そう言ったって、なんで誰もツッコまないんだよ」
「ほぇ〜」
「いくらこの学校の人間が能天気だとしても、流石に黒服で眼と髪が紫なら嫌でも騒ぎになるだろ。オマケに飛んでるし」
「飛んでるのは過去のことっすよ♪」
「一時間前のな」
「ゔ」
痛いとこ突きますっすね・・・。内緒っすが悪魔委員会の情報操作会の人達が、現実認識能力を低下させてるそうっす。ちょーどこの地域は騒ぎが多い力場みたいですし。
「まぁいいか。残りは座学だ。準備もあるがな」
「あーい♪」
「まったく・・・最近疲れが溜まるな・・・」
「充実してるんっすよ」
「・・・かもな」
この人を見ていると楽しい。たぶん人間の中でも少ないタイプの人なんだろうか。それでも、まだまだ楽しく仕事ができそうだ。
「さて」
「ん―――」
現段階の人間の視力では認識できない速度で懐から銃を抜く。事前に魔力を弾に変換してあるので装填の必要はない。
「ダーーーーン!」
廊下の窓を貫通し、誰かの白球を撃ち落す。
「・・・銃声を自分の声で叫ぶのはどうかと思うぞ」
「かっくいいじゃないっすか〜」
「そうかねぇ・・・。ま、助かったよ」
「もっと感謝するがいいっす!」
「さぁ行くぞ」
「エェッ!?」
スタスタ歩いていっちゃうタカシ。もうちょっと喜んでくれてもいいのになぁ〜。あ、タカシはお礼とか苦手だったな。
「待ってっすー!」
まぁ楽しいから許してあげるっす。
☆
「いや、ほんとすんません!」
「何をやってんだ!?」
「すんませぇぇん!」
角刈りで体格のよい体育の先生に叱られる俺。ピッチャーだけでなくバッターも極めようと練習していたのだが・・・。
「窓に穴あいとるやろがぁ!?」
「で、でも明らかにボールじゃなくて弾丸の痕じゃ・・・」
「じゃかしぃわぁ!!」
「ひぃぃぃ!」
くそぉぉ! 誰だ! 俺の田中スペシャル(打者版)3号のホームランボールを邪魔したのは! いやどっちにしても怒られるんだがなぁ・・・。
「あー! てめぇ名前なんやった!?」
「忘れないでくださいよ!!」
「地味なんじゃあっぁあ!!」
「それを言わないでえぇぇえ!」
悲しい怒鳴りあいは授業が始まるまで続いた・・・。
普通に入ったが先生に気づかれなかったので遅刻にカウントされていない。
雪辱を晴らすこの日がな・・・。
長く、苦しい日々だったが! それもここまでだ!!
俺は・・・やってやる!!!
「ふぅ・・・」
薄暗い中、足元の球を掴み、コンクリート製の壁に書いた的に狙いをつける。脳内の集中力は俺の能力内で最大値だ。
「うぅぉおおりゃぁああぁあ!!!」
頭と腕に血液を多めに集め、全身のバネと筋力を使い、真っ直ぐ◎状の的に飛ばす。運動が足りない体は軽い悲鳴をあげるが、微細なものだ。
「・・・きまった」
あまりの衝撃に、橋の下であるここは衝撃が反響した音で包まれた。
「わぁ〜・・・ぷろ野球選手みたいな球っすね!!」
「だろぉ? これを完成させるのにどれだけ苦労したか・・・」
「名前はあるんっすか??」
「もちろんだ!」
腰に左手を当て、右手を太陽(橋に遮られて見えないが)の方角に指差す! 夜な夜な睡眠時間を減らしながら考えた決めポーズだ。これほどかっこよく、目立つ姿はそうは無いハズだ。
そして、この必殺魔球の名も既に決まっている。
「田中スペシャル4号だ!!!」
「・・・名前がダサいっす・・・」
「・・・」
衝撃音は消え、近くの川の流れる音しか聞こえなくなり、なんともいえない沈黙が一瞬場を満たす。
「・・・うるさいな! いずれ学校中に知れ渡る技名になるんだ!」
「んー。やっぱりクラスメイ―――じゃなくて田中君じゃ無理じゃないっすか?」
「今忘れなかったか!?」
「いやー♪ つい♪」
「う・・・クソぅ・・・」
草の地面に顔を向けて心の涙を垂れ流す。
「それより! 例の計画の準備は進んでいるか!?」
「あいあいもちろんっす! 球技大会の種目は野球、特に決勝戦は全校生徒が活目する大舞台っすよっ」
「ふふふ・・・ついに俺が皆に覚えられるのか・・・」
「なんだかおもしろそうでワクワクするっす〜」
説明が遅れた。俺の名は田中。通常の高校生と言えばその通りなのだが、強いて言えば目立たない。
一番の友達にだって名前を忘れられるのだ。つーか俺の一番友虚しいな・・・。
そして! このままでは卒業まで背景の一部になってしまう可能性が生まれてしまった俺は、OSM計画を発案した!
「田中君! OSN計画の全貌をもう一度教えてくださいっす!」
「ナイスタイミングでナイスな質問だルキィちゃん! それとOSMね」
「いやー内容が地味ですぐに忘れちゃって♪」
「・・・」
またしても嫌な沈黙。この子に・・・悪意はないんだ。そうなんだきっと。
「よろしい! 今一度この華麗な計画を反復させよう!」
「わーいっす〜」
ルキィちゃんは煎餅を取り出す。聞く気あんのかなぁ・・・。
「今年の球技大会で、俺が田中スペシャル4号を使い、敵を完封する。そして俺はクラスの英雄、高校のスターとして広く名前を覚えさせるための計画!
俺!(O) スゲー!(S) 目立つぜ!(M)
略してOSM計画!!」
もう一度決めポーズ。
「おー! 何度聞いても凄い計画っすね!!」
「・・・じゃあなんで忘れるのさ」
「うーん・・・語り手にいんぱくとがないからっすか?」
「・・・」
さっきから痛恨の一撃を連続で繰り返すこの子はルキィクルッストミンケルちゃん。本人の希望でルキィちゃんと短縮している。
長い名前だが、俺は人の名前を覚えるのは得意なので問題ない。
「うーん・・・。やっぱツッコミのれべるもタカシのが上っすね!
田中君だとしんくろ率が悪いっす!」
「・・・泣きたい・・・」
「まぁまぁ! ちゃんとアタシがさぽーとするっすから!」
エージェントを思わせる黒服に紫眼紫髪のルキィちゃんは、先日タカシが学校に連れて来た美人ちゃん。紫はとある王家の証らしく(高士談)、転校生として俺と高士のクラスにやってきたのだ。
俺が密かに田中スペシャル4号を練習している現場を目撃され、 [おもしろそうっすから手伝う〜〜♪] っと隊員になった。丁度一人で寂しかったので歓迎したのだが・・・。
「どうして田中君って地味なんっすかねぇ〜〜」
「ぐふっ!」
もっとも触れて欲しくないワード等で俺の胸を刺しまくる。さしずめ今のは妖刀ムラマサ級の大ダメージだ。
「アレっすよ。良い人だけど目だたない人ってよく聞くっすが、田中君のは究極レベルみたいっすねー」
「呪われてるんか・・・」
「不幸力場も人並みですし、目立った点はどこにないっすがねぇ」
知らない単語が聞こえたが、どこか悲しい。
「それより、そろそろ昼休み終わっちゃうっすよっ。
タカシもそろそろ打撲から眼を覚ます頃なのでアタシはそっちに向かうっす〜」
「もうそんな時間か、俺は教室行っとくよ」
「わっかりました〜〜」
ひらひらと飛び、保健室方面へと飛んで行くルキィちゃん。なんでも某国の王家に伝わる技らしい。世界にはエスパーとかよく聞くからその類なのだろう。
・・・な〜んかルキィちゃんのことになると現実思考が鈍くなってるような・・・。何かの陰謀なのだろうか・・・。
☆
「この陶芸の作品はー他の物よりも落ち着きという要素が―――」
美術の時間。角刈りで体格のよい先生の授業を真面目にうける。
「世界情勢も大事だがー身近な新聞を読むことで新たな発見―――」
世界史の時間。角刈りで体格のよい先生の授業をノートだけ写し、田中スペシャルの改良点を考える。
「国語は気合だ!気合さえあれば欠点はとらん!!」
そりゃねーよ・・・と考えながら堂々と惰眠。俺は昼寝がバレたことが一度もないので安心だ。
「ふぅ〜」
本来ならこれで授業は終わりなのだが、明日は球技大会なので準備を始める。 と言っても旗にペンキを塗るだけなので簡単だ。少し校庭らへんが騒がしいが、どっかの男子が何か楽しんでいるんだろうな。
「田島く〜ん。こっちもよろしくー」
「・・・田中ね?」
「あ、ごめんね」
可愛いなぁって思っていた女子に名前を間違えられる。とても虚しい。
☆
「んじゃばいば〜〜〜いっす〜」
「あばよー」
「またね〜」
校門で会ったルキィちゃんと高士に別れを済ませ、門をくぐる。
ふふふ・・・ついに明日か・・・。次にこの門を通るときは、生徒達の注目の的であろう。明日の球技大会が非常に楽しみだ。
「見てろよ・・・!」
野心と野望を持ち、俺は帰路についた・・・。
あ、自販機のつり銭めっけ。
☆
「おかえり〜」
「おかえりなさ〜い」
「ただいまー」
俺の家。ごく普通の一軒家で特筆すべき点はない。そして父は普通のTシャツを着、母は普通のエプロン姿だ。
俺はジャージに着替えたので一味違う。
「いただきまーす」
「風呂いってくるわ〜」
「んじゃ、おやすみー」
その後は普通に、晩飯を食べて風呂に入り、漫画を少し読んで寝た。
☆
「配役交代っす〜」
「へ?」
「いや、なんか悪魔委員会から伝言っすよ♪」
「何かの宗教?」
「あはは〜♪」
「?」
「あくま〜♪ あーくま〜♪ あーっくまーっす〜♪」
廊下で雑談しながら鼻歌を歌うアタシの名前はルキィ。容姿端麗(タカシの友達の、クラスメイトくんがそういってたっす)で超えりーと(悪魔要請学校首席で卒業!)さらには武術の達人(悪魔総合格闘技、学生の部、全悪魔国優勝)のスーパー悪魔っす!
「おいルキィ、次は明日の球技大会の練習だぞ」
「わっかりました〜!」
「・・・・フフフ」
クラスメイト君が笑っているっすが、まぁ置いておきましょう。アタシと一緒に歩いてるこの人はタカシ。既に体操服に着替えているっす。まぁ元々タカシを待っていて、廊下で待ってたワケなんっすが。
この人を不幸から守るためにアタシが派遣されたわけっすね! えっへん。
「そういえばタカシ、最近ゲッソリしてるけど大丈夫っすか?」
「・・・誰かさんの身元を必死で捏造してたんでね」
「あー! タカシ、それ人間界での犯罪じゃないっすか!?」
「・・・ウォイ」
こっちの世界での情報はバッチリ。しかしタカシが犯罪だなんて・・・。大丈夫っす。牢獄でも不幸から守ってあげるっすよ・・・。
「なんか偉い人のコネだけで転校って来た奴なんだが」
「わー。なんだか嫌そうな人っすね〜」
「そいつがハチャメチャな格好をしているから、一番親しそうな俺が周りから質問をされまくったわけだ」
「大変っしたねぇ・・・」
「・・・」
「どしたんっすか?」
「ッガーーーーー!!」
「!? タカシが暴走!?」
「いい加減気づけ! お前がなんの設定も決めずに着やがるから! 常識人達が反応すんだよ!」
「なんですと!?」
「お前のせいで! どれだけ労力を使ったことか!!」
「あ、あは〜〜♪ 眼鏡がズレてるっすよっ」
「知るか!」
「そんなことより急ぎましょ〜!」
「てめ! 飛ぶなー!」
背中から羽を出して滑空っす・・・。ばいく並のすぴーどが出るから追いつかれる心配はないっす。
いやータカシは人間的器が小さくていけませんっすね。うん。
☆
「はぁはぁ・・・」
「タカシが変態に・・・」
「誰かなるか!」
飛んでいるアタシに走って追いかけてきたタカシはへろへろりん。今は二人で座りながらやきゅーの打順を待っているっす。
あ、クラスメイトくんが打った。
あ、すごい高いな。
あ、ふぁーるだ。
あ、三振になってる。
「もう人の体乗っ取るなよルキィ・・・」
「あ、大丈夫っすよ」
「本当かねぇ・・・」
「うぃしょっと」
うっかり忘れてたっす。とりあえず立ち上がります。
「って何やってる!?」
「〜♪」
特殊不幸力場者用の黒制服のぼたんを外し、脱ぎ始めるっす。タカシが焦ってるっすがどうしてでしょう。
「お前! なにやってんだよ!?」
「へ〜?」
声を聴きながら、上の制服を完全に脱いだっす。
「・・・おい」
「なんっすか?」
「初めから言ええぇぇえ!!」
「だからなにがっすかぁぁぁああ!」
この学校の体操服を下に着込んでいたので、ずぼんを脱ぎ捨て、完全に1学生っす。悪魔委員会が [ルキィ] って縫ってあるのを届けてくれたんっす。いやー気前がいいなぁ〜。
「ルキィさーん。次だよー」
「あ、わっかりやしたーー!
んじゃ、お先にタカシ〜」
「あんま人間超えるなよ・・・?」
「悪魔っす♪」
女子クラスメイトさんからばっとをもらって、いざ出陣っす!
「・・・あなたは!?」
どこから吹いてるのか解らない砂塵を身に纏い、アタシの前に立つのは・・・。
「ルキィちゃんか・・・手加減はしねぇぜ!」
「誰でしたっけ!?」
「田中だよぉ!!」
涙でも流してしまいそうな田中くん。わ、わるいことしたっすかな?
「じょ、冗談っすよ〜」
「ウゥ・・・」
ピッチャーとしては優秀なんっすが、なぜ忘れてしまうのか・・・。まぁいいやー!
「とにかく! 勝負っす!」
「三日間俺の名でいっぱいにしてやるわぁあぁ!」
「なんの呪いっすかぁあぁ!?」
ツッコミをいれてる間に素早く構えて、一球目を投げました。
「すとらぁぁああぁっぁぁああいく!!」
人数不足のため参加している、角刈りで体格のよい体育の先生は気合が入ってるっす。
にしても田中くん・・・せこいっすよぅ・・・。
「ふっふっふ・・・田中スペシャル4号を使うまでもないかのぉ・・・」
「とにかく! 今のはマグレっす! 謀略っす!
次で終わりっすよ!」
「よかろう! 勝負だ!」
口調が変わってしまった田中くん。てんしょんが上がってるっすね・・・!
「食らえ! 田中スペシャル3号!!!」
「―――名前改名したほうがぁぁぁ―――」
すとらいくぞーん斜め左・・・。とらえたっす!
「いいっすよぉおおお!!」
「なにいいいいい!」
金属とぼーるは一瞬激しく交じり合い。すぐに空高くへと飛び立ちやしたっす・・・。まぁ難なくホームランっす。
「んなあっさり・・・」
「がんばって・・・クラスメイトくん・・・」
あ、名前なんだっけな。
「がくっ」
なんで忘れちゃうんだろうなぁ〜。
☆
「あくま〜♪ あーくま〜♪ あーっくまーっす〜♪」
「ルキィちゃ〜ん」
「ほぇー」
窓からの景色は緑色。人工的に植えられた大木が並んでいるのを見ていました。そんな風に廊下でぼーっとしてたら、今日で何度目だがわからないっすが、男子生徒話しかけられたっす。あ、この人タカシよりか〜っこいい〜。
「転校してきたんだっけ? 教室とか案内しようかな」
「大丈夫っす。転校初日に暗記したのでっ」
「あ、れ。じゃあ昼飯でも一緒にどう?」
「あータカシと一緒なんっすよ。いやーお父さんのおべんとーおいしくって♪」
「そ、そっか。それならまた誘うね」
「毎日こんな感じなのでたぶん無理っすけど」
「・・・ぐは」
肩を落として去っていく知らない人。アタシはもう働いてるので遊ぶことはできないんっす。こうやってアクビをしている間にもお給金が悪魔口座に振り込まれてるんっすよ・・・。ふわぁ・・・。
「悪い。待たせたか?」
「いえいえ〜。男子生徒くんと喋ってたので退屈じゃなかったっす」
「またか」
「不思議っすねぇ」
「こいつの性格を理解して来てないからな」
「そうそうアタシの本性を知ったら―――ってちゃうっす!!」
「そう言ったって、なんで誰もツッコまないんだよ」
「ほぇ〜」
「いくらこの学校の人間が能天気だとしても、流石に黒服で眼と髪が紫なら嫌でも騒ぎになるだろ。オマケに飛んでるし」
「飛んでるのは過去のことっすよ♪」
「一時間前のな」
「ゔ」
痛いとこ突きますっすね・・・。内緒っすが悪魔委員会の情報操作会の人達が、現実認識能力を低下させてるそうっす。ちょーどこの地域は騒ぎが多い力場みたいですし。
「まぁいいか。残りは座学だ。準備もあるがな」
「あーい♪」
「まったく・・・最近疲れが溜まるな・・・」
「充実してるんっすよ」
「・・・かもな」
この人を見ていると楽しい。たぶん人間の中でも少ないタイプの人なんだろうか。それでも、まだまだ楽しく仕事ができそうだ。
「さて」
「ん―――」
現段階の人間の視力では認識できない速度で懐から銃を抜く。事前に魔力を弾に変換してあるので装填の必要はない。
「ダーーーーン!」
廊下の窓を貫通し、誰かの白球を撃ち落す。
「・・・銃声を自分の声で叫ぶのはどうかと思うぞ」
「かっくいいじゃないっすか〜」
「そうかねぇ・・・。ま、助かったよ」
「もっと感謝するがいいっす!」
「さぁ行くぞ」
「エェッ!?」
スタスタ歩いていっちゃうタカシ。もうちょっと喜んでくれてもいいのになぁ〜。あ、タカシはお礼とか苦手だったな。
「待ってっすー!」
まぁ楽しいから許してあげるっす。
☆
「いや、ほんとすんません!」
「何をやってんだ!?」
「すんませぇぇん!」
角刈りで体格のよい体育の先生に叱られる俺。ピッチャーだけでなくバッターも極めようと練習していたのだが・・・。
「窓に穴あいとるやろがぁ!?」
「で、でも明らかにボールじゃなくて弾丸の痕じゃ・・・」
「じゃかしぃわぁ!!」
「ひぃぃぃ!」
くそぉぉ! 誰だ! 俺の田中スペシャル(打者版)3号のホームランボールを邪魔したのは! いやどっちにしても怒られるんだがなぁ・・・。
「あー! てめぇ名前なんやった!?」
「忘れないでくださいよ!!」
「地味なんじゃあっぁあ!!」
「それを言わないでえぇぇえ!」
悲しい怒鳴りあいは授業が始まるまで続いた・・・。
普通に入ったが先生に気づかれなかったので遅刻にカウントされていない。
2000-04-04 Tue 00:00
[続編、特別編]
俺はこの日知らなかった。
何事も前触れもなく、予想もつかない事態はある。
例えばその日は予定外の休日に羽を伸ばしながらダラけるプランを立てていた。しかし甘かった。予想外の出来事と言うモノはいくらでもある、が。
俺の苦労を増長させるものは・・・喜ばしくない。
それが最初の印象だ。
「・・・今日から・・・」
そこは異質な空間。赤青黄に紫色の線が湾曲している。そのぐねぐねした空間に射す光は、上からではなく下から光が漏れ、空間が捻じ曲がっている。その場に一人浮いていた少女は、一言呟くと下の光へと静かに入っていった。
あー今日の不幸。
財布忘れた。
坂で怖いおっさんに睨まれた。
廊下の曲がり角にバケツがあって、コケて気絶したりした。
教室で遊んでた男子陣のバスケットボールが顔面ヒット。眼鏡のフレームが曲がる。
そして、今現在。
「あー、めんどっ、くさいな・・・」
「ピぃー。仕事怠慢の罪で不幸100年の刑っす」
「口笛できてねぇよ。悪魔界はっ、ダラける人に容赦ない法律あんだな。NEETとかいなさそうだ」
「いや、タカシ専用っすけど?」
「・・・アホ」
見渡せば色黒の男達が各々作業をしている。
俺もただいま運動場でのお仕事。スコップで俺の身長を超える巨大な砂山を掘り返している。ある程度砂が蓄積したら一輪に乗せる。
本来は部活ある者達の仕事だが、不幸のせいで窓を割ったりしている俺は特別扱い。こういう作業には絶対に呼び出しを食らう。
クソッあの角刈りで体格いい教師陣め・・・!
「おーい。そこはもういいからコッチ運んでくれー」
「うぃ〜・・・」
噂を考えれば角刈りで(略)登場か。また仕事が増えたよ・・・。もう2時間くらい作業してんぜ・・・。荷物運びだるいな・・・。
ゾンビの如く歩く俺。横でクマの顔が貼りついている手帳を見ている悪魔は疫病神のような友達のような奇妙な存在。コイツを一言で言うなら、常識知らず。
「んっと、不幸手帳に書いてるくらいの不幸は味わったっすね♪ 後は楽させてあげるっすよ!」
「何を言っている・・・」
あーもう着いちまった。グラウンドの端にはバットやらグローブやらたくさんある・・・。すぐ近くの野球部部室から出すだけ出しやがったか。
「んじゃサクっと」
「できたらなぁ・・・」
「ちょっと待っててくださいねぇ」
「何企んでんだか・・・」
俺と同じ体操服の悪魔。思えばコイツは尻尾とかないのな。悪魔には尻尾が常識ってイメージがある。他の印象が強すぎて忘れていた。服の中に隠しているのだろうか?
「何やってんだか・・・」
先ほどから中腰で鉄と鉄がぶつかり合う音を出しながら何かしだすルキィ。太陽に照らされる紫の髪はいつ見ても違和感がある。今でこそ俺ら一般人と同じ衣装だが、普段はTHEエージェント黒服なのだ。
不幸を軽減してくれると俺に取り憑いたこの悪魔。俺の想像していた悪魔とは似ても似つかない、人間らしく、アホっぽい天然。
ついでに
「んじゃ行きましょっか♪」
「・・・あぁ」
ほら、常識がない。一般人を遥かに超える身体能力の持ち主。山程あった荷物達は、二つの腕で全て持たれていた。バランスとるのが難しそうだ。
「オイっ・・・見ろよアレ」
「す、すごいわ・・・」
「なんだと・・・!?」
グラウンドの真ん中らへんまで来ると、一様に周囲の人々は驚きをしめす。うんうん。そうだよな。光景オカシイよな。180キロくらいありそうな荷物持ってりゃ普通―――
「すげーぞあの転校生!!」
「そうね!! がんばってー!!」
「認めるしかないか・・・!」
え?
「いやー照れちゃいますねぇ〜」
それぞれ仕事をしていた者たちは歓声を飛ばす。仕事のないNEET・・・じゃなくて帰宅部連中まで窓から顔を出して騒ぐ始末。一気にグラウンドは騒がしくなる。いや、なんでそっちの方向へいくんだよ。常識的に考えたらおかしいだろ?
「ヒュゥゥーー!!」
ルキィと違った上手い口笛を鳴らせる男子生徒。いや、なんでそういうテンションに走るんだ。絶対反応おかしいだろ。脳内操作でも影でされてるのか? 正気に戻るんだ。
♪
「自重しろよ」
「えー。大人気だったじゃないっすか♪」
「そういう問題ではなぁいっ」
仕事が終わり、制服に着替えてHR。俺は一般教養と一般常識を蓄えているのでこの常識ブレイカーに注意をする。
しかし、俺の席の隣は中性っぽい女子だったと思うんだが・・・いつの間にルキィになったんだ。
「あー、明日のは球技大会は皆で力を合わせ、優勝を狙って欲しい」
「まぁまぁ。大抵のコトはココじゃなんとかなるっすから♪」
「その根拠は・・・?」
「えへー」
「・・・全く」
量産型疑惑のある先生の話を無視する。悪魔委員会とかいうのが全員の認識能力等を落としているのだろうか。まぁTV沙汰にならん程度には大丈夫なのか・・・。
「それでも抑えろ」
「えー」
俺の不屈の常識が緩んできそうだ・・・。
「以上」
「あ、連絡事項終わったみたいっすよ」
「ふぅ・・・。帰るか」
「あい♪」
全員が起立。しかしまぁ頭痛の種が消えんな・・・。
♪
「お、クラスメイト」
「高士・・・?」
夕焼けの校門でバッタリ。そんな虚ろな眼差しを向けないでくれ。
「クラスメイト君ちぁーっす」
「ルキィちゃん・・・?」
「じ、冗談だ。今日はなんだか地・・・静かだったから、つい」
「今日会うの初めてでしたっけ?」
「いつも通りだよ! 昼休み会ったじゃないかルキィちゃん!」
うーん。コイツには呪いがかかってるとしか思えん。名前を・・ってか存在をつい忘れてしまう。
「あーうっかりしてたっす。田中スペ―――」
「言ったらダメだってーー!?」
「あ♪」
なにやってんだか・・・。
「んじゃ行くぞ〜」
今日は疲れたので早く帰りたい。明日は球技大会だし。
「んじゃばいば〜〜〜いっす〜」
「あばよー」
「またね〜」
ルキィにだけ手を振り、俺には「さらばっ」ふざけよってからに。
まぁ悪いヤツではないから、いいか。
♪
「ふぅ〜」
拍子抜けとはこの事だろうな。まぁ嬉しいんだが。
「タカシ〜」
「ん〜どうした〜?」
今日は球技大会、の予定だったが、突然の雨天により中止になった。田中がメールで凄い欝な文を送ってきたが、落ち着いて無視した。
猫パジャマを脱いで下に行こうと思ったが、このパジャマ保温性が無駄に高すぎて脱ぐ気になれないのだ。
仕方ないのでベッドに転がって南新聞を読んでいた。この記事はなんかおもしろいな。
「今日から妹が来るっす♪」
「・・・」
「・・・たはぁ〜」
イマナンテイッタ?
「だから、妹が来るんっすよ♪ い・も・う・と♪」
「・・・」
「・・・たはぁ〜」
フザケンナヨ?
「そ、そんなハニワみたいな顔で喋らなくてもいいじゃないっすか〜
それに何か不都合があるんっすか!? がぁるふれんどと無縁の生活をしているタカシに! 女友達が増えるチャァァンスじゃないっすか!」
大きなお世話だ。オマケに最近変な外来語を覚えてきやがったなコイツ。俺は眼鏡を外し、ベッドに座る。見据えるは馬鹿(ルキィ)。
「たしかに従兄弟とか親の友達の紹介で女友達増やしてる奴もいる。俺は女好きじゃないが嫌いでもない」
「じゃ、じゃあ―――」
「た・だ・し! 普通の人間ならだ!」
指を指す。ビシッ。
「っウ」
「お前の妹なら絶っ対に不幸絡みの関係者だろうが! 悪魔なんだから当然だよなぁ!?」
「そ、そうっすが―――」
「やっぱりか!? 俺の赤点をこれ以上増やしてどうなる!?
俺を留年させる気か!? そうは行くかぁ! 玄関に砂糖とニンニクをばら撒いてやるわァ!!」
「た、タカシ落ち着いて! 言ってることがハチャメチャっすよ!?」
「ぅっせー!」
「家に侵入できないようにしてやる!」
不幸絡みのことになると熱くなる俺。今まで大変だったんだからな・・・!
雨だが一応換気のタメ開けていた窓に、勉強机越しに近寄り、鍵をしっかりと閉める。次は玄関と一階の窓も閉めなけれ―――
「あ、到着したみたいっすよ〜」
「なに!? どこからだ!!」
そうか! 進入口を塞いでも悪魔はすり抜けられたか! まずい。どこからだ・・・。
「ほら♪」
「ん?」
俺の後ろを指差すルキィ。
「・・・・・・・・・・・・へ」
雨をものともせず、何か黒い物体が高速接近。窓越しに。
「まてまてまてまててままてまててま」
黒い点はまばたきを一度する頃にはデカいタイヤ並の大きさになって近づいてくる。
あのスピードじゃ止まらねぇんじゃ―――
バゥワヮヮヮァァァアアアアリィィィィンンンっっ!!!
窓ガラス2枚を壮絶な音でカチ割り、黒い影は俺の部屋の中に到着してしまった。いや音でかい。近所迷惑。家中はおろか、お隣りさんにまで聞こえたんだろうな。破片の直撃コースに居た俺はいつの間にかドアのすぐ前に立たされていた。横にルキィがいる。
「・・・到着」
何を低音ボイスで仰るのだこの悪魔2号は。ぜんぜん悪魔っぽい侵入方法じゃねーよ。すり抜けでも玄関からでもなくて窓から豪快な入場を果たす悪魔がどこにいる。
「お、おまえは何やってんだ!?」
あまりの衝撃的出会いに戸惑う俺。出会いってなんか良い響きだな。一瞬このガラス片散らばる部屋の惨状を忘れられそうだ。
「やっほー! ひっさしぶりぃ〜!」
「・・・3ヶ月ぶり、お姉ちゃん」
やっぱコイツが妹かい・・・。って妹悪魔の服やばいだろ。それって―――
「学生服!?」
「あ、そういえばタカシの学校のと同じっすねぇ〜!」
「・・・みたいです」
俺の学校の制服と同じ、黒を基調とした・・・っつうか真っ黒男子生徒用制服。ボタンは悪魔印。しかし俺の頭1,5個下程の小柄な妹君には大きすぎるサイズだ。袖で隠れて手が見えんし。
「エージェント服の次は学生服・・・黒けりゃ何でもいいのか・・・」
「えへへ〜! よく似てるっしょー!」
「お姉ちゃんやめ―――」
抱きつくボケ悪魔。たしかに似ているな。
髪はルキィと同じ肩付近のショート、そして色は相変わらず非常識な紫。・・・いや、ルキィと少し違うな、薄紫か? 眼も薄紫色。瞼が眠いんじゃないかって位ボーっとしているが、振りほどこうと暴れながらも変わってないから、あの開き具合が普通なんだろな。
あ、ルキィが笑顔で釈放した。
「・・・ふぅ。高士さん・・・」
「あ、はい」
「今日から卒業実習と姉のサポートを兼ねてアナタに憑かせていただきます」
棒読みの台詞。何度も練習したみたいな機械的リズムを感じる。
「いや、拒否権は」
「ないっすねぇ〜。悪魔委員会乱暴っすから♪」
「・・・よろしくお願いします」
「お断りしま―――う」
背筋に悪寒。
「それはいかんなぁ高士♪」
「そうよ♪ こ〜んな可愛い子が守護霊になってくれるなんて、幸せ者ね♪ 高士♪」
「ぬわっ! だから気配消してこないでくれ!」
入場音楽はやはり聞こえていたようだ。俺の父母はノリノリの勢いでルキィ妹に近寄る。
「部屋はまだ空いてるから好きに使ってくれ♪ それとも」
「ルキィちゃんと同じ部屋がいいかしら♪」
「あ! おんなじがいいっすー!」
「・・・・お願いします」
「あ、あのぉー」
「さ♪ お昼ご飯でも食べようか♪」
「今日はハヤシライスよ♪」
「わーい♪」
「行きましょう・・・」
一同が部屋を出て行く。
アレ? 決定?
一同は部屋を出て行く。
先頭に押されていた悪魔妹がわざわざ戻り、俺に言う。
「お世話に・・・なります。それと・・・ゴメンなさい・・・っ」
「へ?」
何か手を一瞬動かし、そのまま走ってルキィ達に追いつく妹くん。
「あ・・・!」
右頬に軽い出血。小さなガラス片が1,2箇所俺の顔面を刻んだらしい。さっきまでなかった。
「・・・不幸決定事項ね」
丁寧に戻ってきて仕事を果たしたらしい。優秀なことだ。
そう。俺の不幸はより確実、確定的なモノになったのかもしれない。
何事も前触れもなく、予想もつかない事態はある。
例えばその日は予定外の休日に羽を伸ばしながらダラけるプランを立てていた。しかし甘かった。予想外の出来事と言うモノはいくらでもある、が。
俺の苦労を増長させるものは・・・喜ばしくない。
それが最初の印象だ。
「・・・今日から・・・」
そこは異質な空間。赤青黄に紫色の線が湾曲している。そのぐねぐねした空間に射す光は、上からではなく下から光が漏れ、空間が捻じ曲がっている。その場に一人浮いていた少女は、一言呟くと下の光へと静かに入っていった。
あー今日の不幸。
財布忘れた。
坂で怖いおっさんに睨まれた。
廊下の曲がり角にバケツがあって、コケて気絶したりした。
教室で遊んでた男子陣のバスケットボールが顔面ヒット。眼鏡のフレームが曲がる。
そして、今現在。
「あー、めんどっ、くさいな・・・」
「ピぃー。仕事怠慢の罪で不幸100年の刑っす」
「口笛できてねぇよ。悪魔界はっ、ダラける人に容赦ない法律あんだな。NEETとかいなさそうだ」
「いや、タカシ専用っすけど?」
「・・・アホ」
見渡せば色黒の男達が各々作業をしている。
俺もただいま運動場でのお仕事。スコップで俺の身長を超える巨大な砂山を掘り返している。ある程度砂が蓄積したら一輪に乗せる。
本来は部活ある者達の仕事だが、不幸のせいで窓を割ったりしている俺は特別扱い。こういう作業には絶対に呼び出しを食らう。
クソッあの角刈りで体格いい教師陣め・・・!
「おーい。そこはもういいからコッチ運んでくれー」
「うぃ〜・・・」
噂を考えれば角刈りで(略)登場か。また仕事が増えたよ・・・。もう2時間くらい作業してんぜ・・・。荷物運びだるいな・・・。
ゾンビの如く歩く俺。横でクマの顔が貼りついている手帳を見ている悪魔は疫病神のような友達のような奇妙な存在。コイツを一言で言うなら、常識知らず。
「んっと、不幸手帳に書いてるくらいの不幸は味わったっすね♪ 後は楽させてあげるっすよ!」
「何を言っている・・・」
あーもう着いちまった。グラウンドの端にはバットやらグローブやらたくさんある・・・。すぐ近くの野球部部室から出すだけ出しやがったか。
「んじゃサクっと」
「できたらなぁ・・・」
「ちょっと待っててくださいねぇ」
「何企んでんだか・・・」
俺と同じ体操服の悪魔。思えばコイツは尻尾とかないのな。悪魔には尻尾が常識ってイメージがある。他の印象が強すぎて忘れていた。服の中に隠しているのだろうか?
「何やってんだか・・・」
先ほどから中腰で鉄と鉄がぶつかり合う音を出しながら何かしだすルキィ。太陽に照らされる紫の髪はいつ見ても違和感がある。今でこそ俺ら一般人と同じ衣装だが、普段はTHEエージェント黒服なのだ。
不幸を軽減してくれると俺に取り憑いたこの悪魔。俺の想像していた悪魔とは似ても似つかない、人間らしく、アホっぽい天然。
ついでに
「んじゃ行きましょっか♪」
「・・・あぁ」
ほら、常識がない。一般人を遥かに超える身体能力の持ち主。山程あった荷物達は、二つの腕で全て持たれていた。バランスとるのが難しそうだ。
「オイっ・・・見ろよアレ」
「す、すごいわ・・・」
「なんだと・・・!?」
グラウンドの真ん中らへんまで来ると、一様に周囲の人々は驚きをしめす。うんうん。そうだよな。光景オカシイよな。180キロくらいありそうな荷物持ってりゃ普通―――
「すげーぞあの転校生!!」
「そうね!! がんばってー!!」
「認めるしかないか・・・!」
え?
「いやー照れちゃいますねぇ〜」
それぞれ仕事をしていた者たちは歓声を飛ばす。仕事のないNEET・・・じゃなくて帰宅部連中まで窓から顔を出して騒ぐ始末。一気にグラウンドは騒がしくなる。いや、なんでそっちの方向へいくんだよ。常識的に考えたらおかしいだろ?
「ヒュゥゥーー!!」
ルキィと違った上手い口笛を鳴らせる男子生徒。いや、なんでそういうテンションに走るんだ。絶対反応おかしいだろ。脳内操作でも影でされてるのか? 正気に戻るんだ。
♪
「自重しろよ」
「えー。大人気だったじゃないっすか♪」
「そういう問題ではなぁいっ」
仕事が終わり、制服に着替えてHR。俺は一般教養と一般常識を蓄えているのでこの常識ブレイカーに注意をする。
しかし、俺の席の隣は中性っぽい女子だったと思うんだが・・・いつの間にルキィになったんだ。
「あー、明日のは球技大会は皆で力を合わせ、優勝を狙って欲しい」
「まぁまぁ。大抵のコトはココじゃなんとかなるっすから♪」
「その根拠は・・・?」
「えへー」
「・・・全く」
量産型疑惑のある先生の話を無視する。悪魔委員会とかいうのが全員の認識能力等を落としているのだろうか。まぁTV沙汰にならん程度には大丈夫なのか・・・。
「それでも抑えろ」
「えー」
俺の不屈の常識が緩んできそうだ・・・。
「以上」
「あ、連絡事項終わったみたいっすよ」
「ふぅ・・・。帰るか」
「あい♪」
全員が起立。しかしまぁ頭痛の種が消えんな・・・。
♪
「お、クラスメイト」
「高士・・・?」
夕焼けの校門でバッタリ。そんな虚ろな眼差しを向けないでくれ。
「クラスメイト君ちぁーっす」
「ルキィちゃん・・・?」
「じ、冗談だ。今日はなんだか地・・・静かだったから、つい」
「今日会うの初めてでしたっけ?」
「いつも通りだよ! 昼休み会ったじゃないかルキィちゃん!」
うーん。コイツには呪いがかかってるとしか思えん。名前を・・ってか存在をつい忘れてしまう。
「あーうっかりしてたっす。田中スペ―――」
「言ったらダメだってーー!?」
「あ♪」
なにやってんだか・・・。
「んじゃ行くぞ〜」
今日は疲れたので早く帰りたい。明日は球技大会だし。
「んじゃばいば〜〜〜いっす〜」
「あばよー」
「またね〜」
ルキィにだけ手を振り、俺には「さらばっ」ふざけよってからに。
まぁ悪いヤツではないから、いいか。
♪
「ふぅ〜」
拍子抜けとはこの事だろうな。まぁ嬉しいんだが。
「タカシ〜」
「ん〜どうした〜?」
今日は球技大会、の予定だったが、突然の雨天により中止になった。田中がメールで凄い欝な文を送ってきたが、落ち着いて無視した。
猫パジャマを脱いで下に行こうと思ったが、このパジャマ保温性が無駄に高すぎて脱ぐ気になれないのだ。
仕方ないのでベッドに転がって南新聞を読んでいた。この記事はなんかおもしろいな。
「今日から妹が来るっす♪」
「・・・」
「・・・たはぁ〜」
イマナンテイッタ?
「だから、妹が来るんっすよ♪ い・も・う・と♪」
「・・・」
「・・・たはぁ〜」
フザケンナヨ?
「そ、そんなハニワみたいな顔で喋らなくてもいいじゃないっすか〜
それに何か不都合があるんっすか!? がぁるふれんどと無縁の生活をしているタカシに! 女友達が増えるチャァァンスじゃないっすか!」
大きなお世話だ。オマケに最近変な外来語を覚えてきやがったなコイツ。俺は眼鏡を外し、ベッドに座る。見据えるは馬鹿(ルキィ)。
「たしかに従兄弟とか親の友達の紹介で女友達増やしてる奴もいる。俺は女好きじゃないが嫌いでもない」
「じゃ、じゃあ―――」
「た・だ・し! 普通の人間ならだ!」
指を指す。ビシッ。
「っウ」
「お前の妹なら絶っ対に不幸絡みの関係者だろうが! 悪魔なんだから当然だよなぁ!?」
「そ、そうっすが―――」
「やっぱりか!? 俺の赤点をこれ以上増やしてどうなる!?
俺を留年させる気か!? そうは行くかぁ! 玄関に砂糖とニンニクをばら撒いてやるわァ!!」
「た、タカシ落ち着いて! 言ってることがハチャメチャっすよ!?」
「ぅっせー!」
「家に侵入できないようにしてやる!」
不幸絡みのことになると熱くなる俺。今まで大変だったんだからな・・・!
雨だが一応換気のタメ開けていた窓に、勉強机越しに近寄り、鍵をしっかりと閉める。次は玄関と一階の窓も閉めなけれ―――
「あ、到着したみたいっすよ〜」
「なに!? どこからだ!!」
そうか! 進入口を塞いでも悪魔はすり抜けられたか! まずい。どこからだ・・・。
「ほら♪」
「ん?」
俺の後ろを指差すルキィ。
「・・・・・・・・・・・・へ」
雨をものともせず、何か黒い物体が高速接近。窓越しに。
「まてまてまてまててままてまててま」
黒い点はまばたきを一度する頃にはデカいタイヤ並の大きさになって近づいてくる。
あのスピードじゃ止まらねぇんじゃ―――
バゥワヮヮヮァァァアアアアリィィィィンンンっっ!!!
窓ガラス2枚を壮絶な音でカチ割り、黒い影は俺の部屋の中に到着してしまった。いや音でかい。近所迷惑。家中はおろか、お隣りさんにまで聞こえたんだろうな。破片の直撃コースに居た俺はいつの間にかドアのすぐ前に立たされていた。横にルキィがいる。
「・・・到着」
何を低音ボイスで仰るのだこの悪魔2号は。ぜんぜん悪魔っぽい侵入方法じゃねーよ。すり抜けでも玄関からでもなくて窓から豪快な入場を果たす悪魔がどこにいる。
「お、おまえは何やってんだ!?」
あまりの衝撃的出会いに戸惑う俺。出会いってなんか良い響きだな。一瞬このガラス片散らばる部屋の惨状を忘れられそうだ。
「やっほー! ひっさしぶりぃ〜!」
「・・・3ヶ月ぶり、お姉ちゃん」
やっぱコイツが妹かい・・・。って妹悪魔の服やばいだろ。それって―――
「学生服!?」
「あ、そういえばタカシの学校のと同じっすねぇ〜!」
「・・・みたいです」
俺の学校の制服と同じ、黒を基調とした・・・っつうか真っ黒男子生徒用制服。ボタンは悪魔印。しかし俺の頭1,5個下程の小柄な妹君には大きすぎるサイズだ。袖で隠れて手が見えんし。
「エージェント服の次は学生服・・・黒けりゃ何でもいいのか・・・」
「えへへ〜! よく似てるっしょー!」
「お姉ちゃんやめ―――」
抱きつくボケ悪魔。たしかに似ているな。
髪はルキィと同じ肩付近のショート、そして色は相変わらず非常識な紫。・・・いや、ルキィと少し違うな、薄紫か? 眼も薄紫色。瞼が眠いんじゃないかって位ボーっとしているが、振りほどこうと暴れながらも変わってないから、あの開き具合が普通なんだろな。
あ、ルキィが笑顔で釈放した。
「・・・ふぅ。高士さん・・・」
「あ、はい」
「今日から卒業実習と姉のサポートを兼ねてアナタに憑かせていただきます」
棒読みの台詞。何度も練習したみたいな機械的リズムを感じる。
「いや、拒否権は」
「ないっすねぇ〜。悪魔委員会乱暴っすから♪」
「・・・よろしくお願いします」
「お断りしま―――う」
背筋に悪寒。
「それはいかんなぁ高士♪」
「そうよ♪ こ〜んな可愛い子が守護霊になってくれるなんて、幸せ者ね♪ 高士♪」
「ぬわっ! だから気配消してこないでくれ!」
入場音楽はやはり聞こえていたようだ。俺の父母はノリノリの勢いでルキィ妹に近寄る。
「部屋はまだ空いてるから好きに使ってくれ♪ それとも」
「ルキィちゃんと同じ部屋がいいかしら♪」
「あ! おんなじがいいっすー!」
「・・・・お願いします」
「あ、あのぉー」
「さ♪ お昼ご飯でも食べようか♪」
「今日はハヤシライスよ♪」
「わーい♪」
「行きましょう・・・」
一同が部屋を出て行く。
アレ? 決定?
一同は部屋を出て行く。
先頭に押されていた悪魔妹がわざわざ戻り、俺に言う。
「お世話に・・・なります。それと・・・ゴメンなさい・・・っ」
「へ?」
何か手を一瞬動かし、そのまま走ってルキィ達に追いつく妹くん。
「あ・・・!」
右頬に軽い出血。小さなガラス片が1,2箇所俺の顔面を刻んだらしい。さっきまでなかった。
「・・・不幸決定事項ね」
丁寧に戻ってきて仕事を果たしたらしい。優秀なことだ。
そう。俺の不幸はより確実、確定的なモノになったのかもしれない。


